CREATIVE CREW ケース例

The Story

Aさんの取り組み

一般企業に就労経験のあるAさん

短期目標は、<少しずつ馴染みながら仕事に励む>こと。
最初のテーマは「雰囲気に馴染み、働く基礎を学ぶこと」。
体験実習初日、緊張した雰囲気の中で表情も強張っていた。
これは当然のことであり、本人も「人見知りで…」と言っていた。
先輩スタッフたちと仕事を通して関わる中で笑顔も見られはじめ、少しずつ気持ちも体も和らいできた。
時には先輩スタッフにコーヒーを入れてもらい、みんなと一緒に美味しい時間を過ごす姿も見られた。
「クリエイティブクルーの利用者と、焦らずゆっくりなじんでほしい。
 そして、しっかり仕事を覚え、前に進んでいってほしい。」と話をしていた。
過去には、一般企業で清掃の仕事をしていた経験もある。しかし様々な面において、しんどく、つらい思いをした。
実際、周りの利用者と話をするときに緊張しており、表情も硬かった。
「うまくいかないと不安になるんです」と、神妙な顔で言ってきたこともある。

The present situation 現 状

まず仕事内容を覚える。

メッセージカードカット、ブランドタグのカット、巾着などの縫製…。
先輩利用者に教えてもらう中で、真剣に人の話を聞き、努力する姿勢と気持ちが根付いてきた。
しかし、仕事の手が止まってしまうことが多く、「集中力」「持続力」の面での課題が見えてきた。
「持続力」については「速度(ペース)」が関係してくる。
例えばメッセージカードカットでは、3時間で3枚。一般的には「遅い」と言わざるを得ない。
「全般的に遅い」というキーワードが「彼女の弱さ」へとつながり、この弱さに対して、取り組みの標準を合わせて行くことにした。

Her worries

彼女の持つ弱み

最大限にイメージ、仮説を立てる。
  • 遅いから怒られるんです

    「マイペース」と「ユアペース」のバランスを取りながら、不安からくる「繰り返し行動」「常同行動」と向き合っていく必要がある。

  • 平穏無事な生活を送りたい

    20代の女性が考えるテーマにしては、あまりにも寂しい。
    もっと躍動的で年齢に応じた内容を期待したい。
    この考えの向こう側には、諦めのような雰囲気が漂い、「前向き」ではなく「後ろ向き」である。

  • しんどいです、やめたいです

    イヤなことから逃げてきた人生である。しかし、それは本心だろうか。
    実は、逃げる・避けるしか方法を知らないのではないだろうか。
    考え方として、
    「本当は、続けたい」
    「がんばりたい」
    「ペースを早くしたい」
    「認められたい」
    「必要とされたい」
    「前向きになりたい」
    「褒められたい」
    という気持ちがあるのではないだろうか。

Her strengths

彼女の持つ強みをポイント項目化

日頃の向き合いから感じたこと

  • 休まずに出勤する

  • 遅刻をしない

  • 挨拶が出来る

  • 掃除が上手

  • 最後までやり切る

  • 人と関わりたい

  • 気が利く
    (机の上のゴミなど)

  • ゆっくり丁寧

  • 穏やかな性格

  • 体調管理ができる

  • 人に物事を
    教えることが出来る

  • 自分の考えを
    説明することが出来る

  • 笑顔がカワイイ

  • こどもが好き

  • 優しい人柄

  • more...

具体的な取り組み

強みと弱みを擦り合わせて考える

ありとあらゆる視点や角度から物事を考えてみる。
やはり、本人のこれまでの生い立ちが気になる。
ある日、皆と一緒にテレビを見ているとき「児童の虐待」のニュースが取り上げられていた。
それを見た瞬間、表情を一気に曇らせ「私、小さいときにお父さんから・・」というつらい過去を思い出してしまう。
この過去を払拭するのは難しく、負のイメージが外部から作用した場合、一気に後ろ向きな思考になってしまう。
この「後向き」のベースの上に「前向き」を立ち上げていくだけでは、根本の状態を立て直すのは難しいと考える。そのために強み(前向き)のもと、弱み(後向き)の部分を丁寧に粘り強く「修正」していく必要がある。

過去のつらい出来事は消えない。
しかし、つらい実感を持って進んでいく機会を多く感じることで、「充実感」や「満足感」を得ることが出来るはず。
一方で、努力がないまま頓挫している過去は、足を引っ張り続け、最後には引き込まれてしまう恐れがある。
「どちらがいい?」という問いに対して、「そっち(過去)のほうはイヤです」とハッキリと答えていた。

思いと今後

前述したように何か事が起きれば自動的に「後ろ向き」が入ってしまう。
一度そのスイッチが入ると気持ちもカラダも後ずさりする。
そのため、話を聞くだけでなく具体的な解決方法や考え方を教えていく必要がある。
ただ「遅いから早くしてください」という働きかけだけでは混乱して進まない。
そこで、一日のスケジュールを作成提示、具体的な見通しと行動に範化できるように工夫している。
また、行動と連動させることで「実感」と「成功の積み重ね」で気持ちとカラダが少しずつ前進していくと考えている。
前述のように「彼女の強み」は魅力的な中身であり、本当に成長してほしい思いと願っている。
今後も一緒に汗をかきながら進んでいきたい。